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作品について_平田星司

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[離脱する色彩 – あるいはPhoton]

「城」 今年の夏、渋谷にある洋服店で「転落」(2012年制作)という絵画 ― 垂直のストライプ
からなるアクリル画で、ストライプはキャンバスからはみ出し宙吊りになっている ― を展示した。
猛暑とコロナ禍が続いていたこともあって、店内の換気を配慮した空気の流れは、蜻蛉の羽の
ような薄い色彩の皮膜を揺らしていた。その様子は音のしない楽器のようだった。
「転落」では画面のすべてをストライプで覆っていたが、「城」ではより少ない本数で構成されている。
ベースの素材も絵画用の下地を施した白いキャンバスから服飾用の柔らかいコットンのものに変えた。
あらかじめ考えたことではなかったが、結果として少ないストライプからなる形象と現れた空白だけが残った。

「Photon(光子)」 タイトルは物理学の電磁波などで扱う素粒子の一つである光粒子の別称から。
作品は卓上用のジャッキの上に、透明なガラス板で覆った写真、そしてその上に小さなオブジェが乗っている。
写真のイメージは長年続けている、「Still Life(静物の表面に直に顔料を塗った絵画的な作品)」を
真上から撮影したものだ。
元々「Photon」とは関係がなく、必要から静物の位置を把握するためだったが、どこか惑星の表面のような
イメージは真上からの撮影された静物という事実にもかかわらず平面に圧縮されたようだった。
光によって封じ込められた写真のなかのオブジェ例えば “ウグイス型レモン絞り器” が発射台のような
ジャッキの伸長に合わせてイメージの連想を呼び、レモンの皮となって立ちあがる。

2022 11月
平田星司

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