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展覧会テキスト_木村桃子

「もれる光 のびる線 PDFファイル」

|断面|
ご縁あってラジオに出演させてもらい、人生初の曲紹介では矢野顕子の「ごはんができたよ」を流させ
てもらった。この曲の金太郎飴的な歌詞のつくりが、当時作品のモチーフとしてよく取り上げていた星
座の構造と似てるなと思っていた。金太郎飴的というのは、あるものに沿った時間軸を輪切りにし、ワ
ンシーンごとに見せていくような、平面が連続して立体をかたちづくるような歌詞の展開のことで、輪
切りのきゅうりでもイメージは近いかもしれない。

星座も、地球から見たら空に点が貼り付いてるだけに見えるが、実は隣り合う星同士も前後の奥行きが
存在していて、光が届く時間が立体的な厚みを作り上げている。
二つとも、ある面に対して無限に続く筒状の軸があり、金太郎飴みたいに輪切りにすると断面の絵がち
ょっとづつ歪んだりずれるような、そんな形が頭に浮かぶのだ。

オーソドックスに木彫作品を製作する際に、製材した平滑な面に線を引き輪郭をとっていく過程がある。
だいたい正面・側面・上面の3方向からの輪郭をとるとそれらしい量感になってくるのだが、1方向 (正面)
から見た輪郭だけをくり抜いた状態は、金太郎飴や輪切りのきゅうりのように間抜けで、連続する形の
断面が無防備に曝け出されているようだ。

|寄木|
別々の木片を圧着して一体化させることを寄木という。接着面(断面)の面積に対して、手前・奥に長
く木を繋ぐにはダボなどの芯のようなものが貫いていないと重さで剥がれ落ちたり、ポキリと折れてし
まう。

レリーフを彫る最中に穴が開いて、向こう側の景色が突如として目の前に現れた瞬間、光が面を貫いて
こちらに向かってくる。世界が開けたかのような、一つの次元が崩壊したかのような、ハッとする瞬間だ。
穴から貫かれるその光を芯にしたら、無数の断面を寄木できそうだなと思った。光が届く限り続く、長
い長い金太郎飴を逆再生できないだろうか。

木村桃子

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