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展覧会テキスト_平田星司

「バロック的な庭師」
キャンバスに塗布された、オレガノ、タイム、セージ、マジョラム、バジルなどの
ドライハーブを刈り込んだ作品。
描かれているのはインターネット上で見つけた、自然との拮抗を拒否するかのような
バロックの庭園の草木のデザインや庭園の平面図の画像から引用、アレンジしたものだ。
ハーブは古くは薬草として、また祭儀や信仰に使われたというだけあって、制作当初は
独特な強い香りを放っていたが、時間が経つにつれ和らいでキャンバスの周囲に漂うほどになった。

香りは記憶と結びつき連想を誘う。
コールリッジの、男が夢の中で楽園を通り抜けた証として一輪の花を与えられる。
朝目覚めてみると手の中にその花があったという話を思い出した。
そこからの連想なのか、通り抜けるということを考えるうちに、小道を張り巡らせた庭園を
不確かな足取りで歩むうちに視線の先に次々と現われる風景が頭に浮かんだ。

「伝道者」
2014年からのシリーズで海中から採取したガラスボトルの作品。
長い間海中に漂うことで、表面には主に石灰藻とよばれる藻が付着、増殖して石灰質の
淡いピンク色の骨格を作る。

「書き言葉、泉 / Ecriture, Fountain」
万年筆を使う際、紙の上の余分なインクを吸い取るのにブロッターというものがある。
形は黒板消しに似ているが底面は湾曲していてそこに吸い取り紙をつける。
万年筆を使うことは多くはないが、それでもいつしかインクの染みは増えていく。
万年筆を英語でFountain pen(泉のペン)というが、逆に紙片の染みは吸い取られた
言葉たちの溢れでる小さな泉となる。

                             2020年5月

                             平田星司

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